【 音の先になにがあるか 】  

柚月 兎子

直感でよい作品だ、とはわかった。
クラッシックをよく聴くらしい筆者の描写はかなりの説得力を持って伝わって来る。一朝一夕でものせるものではあるまい。ほかにも注意が必要な要素が多々散見されるが、丁寧に処理してある。

だがこの作者にはおそらく、あまりに多くのものが見えすぎているのだろう。葛藤、相克、告解ーーどのテーマも主題を張れるがゆえに散漫になる。書き手からすれば贅沢な悩みだが、現実と虚構の境目には注意しなければならない。作り手が、小説という表現形式に何を託したいのかが見えてこないのである。

後半詩歌に仮託するのも、そんな迷いが透けて見えるとわたしには感じられた。読み手からすれば唐突にすぎよう。小説という形式をあえて選択するのであれば、散文と韻文的表現の対比を、より選択的、効果的に用いる事ができたのではないか。

長々と書いてしまったが、わたしにはこの書き手はもっとずっと良いものを書いて、この不勉強な読み手をいつか驚かせてくれるだろうという大きな期待がある。駄文失礼。

公開日時:2018-05-07

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コメント一覧

コメント数:1件
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三津凛 20日前

的確な書評をありがとうございます! まだまだ未熟な部分が多いことを改めて認識できました。