【 恋することで世界を知った 】  

文野麗

夢の中にいるような、甘美で清らかな物語である。
美しい女性に出会ったとしか述べられていないが、主人公に大きな価値観の変化がもたらされていることを踏まえ、ここでは主人公は女性に恋をしたのだと断定することにする。
恐らく貴族階級の主人公は、教育を受けることが幸せになる道だと考えていたが、女性はそれを拒否する。そして「教育を受けておらずとも、私は誇りを持ち今を精一杯に生きている」と答える。これが主人公の目から鱗を落としたのだ。
これだけの言葉で、なぜ主人公は「今の今まで自分の時間は動いてすらいなかった」と悟るまでに至ったのだろうか。おそらく「人間としての価値」は教育によって育まれるのだと信じていたのだろう。ところが目の前の女性は教育を受けていないにもかかわらず、「人間としての価値」が高いことを認めざるを得ないほどに凛として美しかった。そのことが真実であり、主人公はそれまでの人生で真実を知らなかった。つまり、今までの人生は偽物だった、そう感じたのではないか。
恋をすることで世界が変わるとはよく言われることだが、今作ではそれを小さな物語の中で表現しきっている。

公開日時:2018-05-10

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コメント一覧

コメント数:1件
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春風月葉 17日前

作品の裏側まで見ていただけたようでやや恥ずかしく、そして嬉しい書評でした。 ありがとうございます。